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「だから面倒な女にも絡まれるんだよなあ。この間の受付の奴、見たか?あれ完全にストーカーだろ…警察に相談したみたいだけど、そのうち刺されるんじゃねえの…」
忙しいのも事実で、女の子達と話していたのはみんな仕事で、言い寄られていたのはストーカーのせいで。信じて欲しいと、そう言っていた彼は――何一つ、嘘を言っていなかった?
「裕人さん!!」
私は、彼が相談を終えて帰宅準備を始めたのを見計らって声をかけた。久しぶりにきちんと顔を合わせる彼は、記憶にあるより随分とやつれた顔をしている。
「ああ…君か。ずっと連絡、できなくてごめんね。話したいことがあるんだけど…」
「私もよ!あの、私…っ」
「別れよう」
え、と思った。今、裕人はなんて?
「別れて欲しい。…君と、これからも一緒にやっていける自信は、もうないから」
謝罪しようと思っていた。誤解していたことを。そして、もう一度ちゃんと恋人としてやり直そうと、そう言おうとした矢先だった。
どうして。私はこんなに綺麗になったのに。前の私よりずっと魅力的になったはずなのに、どうして彼はこんな私と別れたいだなんて言い出すのだろう。
「俺が好きになった君は、そんなんじゃないんだ。君がいくら、綺麗になったんだとしても。それでも俺は…今までの君の方がずっと好きだった。だって君は、弱い人の気持ちがちゃんと分かる人だったから。虐められている人を鼻で笑ったり、見下すような人じゃなかった。細かな気遣いができて、弱い人に寄り添える、そういう君の優しいところが…俺は好きだったのに……」
今の君はもう、俺の好きだった君じゃない。裕人の声は、冷たいものだった。
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