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「君も悪趣味だよねえ」
店主の彼は、本を返しに来た俺に呆れたように笑って言った。
「願いが一回しか叶わないってことも、“絶対叶えたい願い”に釣り合う対価は“捨ててもいいどうでもいいもの”じゃないってことも、ちゃんと言ってあげなかったの?」
「だってそんくらい言わなくても分かるだろ普通。取り消しはきかないって、それは俺ちゃんと言ったんだぜ?」
ぽーんと魔道書を投げると、店主の少年は素晴らしい反射神経でそれをキャッチした。ゴールキーパーさながらの腕前に、思わず拍手する俺。最近魔女や魔術師の間ではサッカーが大ブームだったりする。
「要らないって言ったじゃん」
ぶつぶつ言いながら店主が本を持って引っ込むのを見て。俺は一時の主であった彼女を思い、笑みを浮かべた。
人間は実に愚かである。ゴミ箱に捨てたゴミが、回収車に拾われていってしまったら、もう生半可な努力では手元に戻ってくることはない。たとえゴミと勘違いして、長年大切にしていた指輪を落としてしまっていてもそれは変わらないことだ。
「非難されるいわれなんかねーよ?俺はちゃんと…あんたのオネガイ、叶えてやっただろ?」
サトヤは店の奥を見て、愉快な気持ちで鼻歌を歌った。さて、次は誰が、自分の魔道書を見つけてすがりついてくることだろうか。
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