<前編>

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「よくこの本見つけたもんだねえ…」  まるで少女のような可愛い顔をした店主は、私が持ってきた本を見て驚いたような声を上げた。これでも彼はそれなりの年齢の青年であるらしい。古書店の店主をしておいて、見た目通り十代ということは多分無いだろう。そして胸についた名札の名前は結構男性的なものである。  どうしてこんな寂れた場所に古書店なんて開いているんだろう。私は不思議に思ったがいちいち尋ねることはしなかった。なんせ今一番大事なのはこの店のことでも店主の正体でもなく、今レジに持ってきた本の中身なのだから。 「…これ…タイトルも何も書いてないんですけど…」  ボロボロの、辞書のように分厚い茶色の革表紙の本だ。タイトルらしきものは何処にもない。ただ、裏の見返しに一文サインがあるだけだ。  “対価を払うなら、どんな願いでも叶えます。何故なら、彼は魔法使いなのだから”。
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