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「うん、タイトル意味ないからねえ」
少年なのか青年なのかも怪しい彼はにっこりと微笑んで言う。
「でも、此処に書いてあることは本当。この古書店に来てこれを見つけられるお客さんはそうそういないもんなんだよ」
「そうなんですか?」
「うん。この本を見つけるのは、“絶対に叶えたい強い願い”がある人だけだからね」
「………」
実に胡散臭い話だ。でも――実際私はその通りなのだから、何も言うことはできない。
叶えたい願いがあった。でもそれは、今の私の能力では、お金では、けして叶えることのできない願いでもある。悩んで悩んで、気がついたらこの店に入っていた。その経緯もよく思い出せない。
だから、こんな眉唾の話でさえ――信じてしまいそうにもなるのである。
「まあ、信じられないのも無理はないけどさ。せっかく本に呼ばれたんだから、試してみればどう?簡単だよ、本を持って帰って、誰もいない場所で呼んで見ればいい…“サトヤさん”って。そうしたら、あの気分屋でもちゃんと来てくれるはずだからさ」
でも、ちゃんと考えるんだよ?と青年は告げた。
「一番欲しいものと、対価にするもの。よーく考えて選んでね?人生と一緒だよ。都合よく取り返せるものなんて、そうそうあるもんじゃないんだからさ…」
***
私は、都内で働く一人暮らしのOLだ。
バリバリのキャリアウーマン!なんて呼べるほど有能でもなく、されど大した趣味もない。殆ど友達もおらず、いつも休日は一人でネットをする日々である。根暗な性格には一応理由があるのだった。――私は、悲しくなるほどに――不細工だったのである。
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