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それだから、デジ脳チャットに参加しないということは、存在そのものが消去されている状態と一緒だ。
「まさかアイリちゃんまで……」
「早計に結論を下すのは禁物だよ。アイリちゃんの住所を検索しているから、2人で彼女に会いに行こう」
クニヒロくんの言葉に励まされて、ぼくは怖じ気づいていた気持ちを奮い立たせた。
ぼくたちは調べた住所を頼りに、アイリちゃんの家を探し当てる。
家の玄関に立つと、すぐにアイリちゃんが出てきた。
「あら、マモルくんにクニヒロくん。はじめましてね」
アイリちゃんが笑いながら挨拶する。
ぼくたちはデジ脳チャットでしか会話してないので、直接顔を合わすことは皆無なのだ。
それにしても、アイリちゃんの表情は一種異様だった。
瞳がキラキラと輝いて、まるで硝子が散りばめられているみたいだ。
「アイリちゃん、どうして約束を破ったの?」
「約束? ああ、タケルくんを訪ねるってことね」
アイリちゃんが答えるも、その表情は上の空だった。
しきりに何かを口ずさんでいる。
怖れていた予感が的中した。
(やっぱりアイリちゃんも“さびしん病”になっちゃったんだ)
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