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ガラリと通信室のドアを開けると、中には「老いた大人」であるクオン先生が座っていた。
他には誰もいない。
この学校の先生は、クオン先生唯ひとりなのである。
それも当然だ。
この国に「若い大人」は絶滅状態だったからだ。
ぼくが生まれる前に起こった世界大戦が原因だった。
2つの大国から波及した戦乱で、この国の「若い大人」が極端に減少した。
それで日本は「老いた大人」と、ぼくら子どもしか残っていないのだ。
それが結果的に良かったのか、子どもが政治に介入したことによって、この国は理想郷となった。
賄賂や汚職のない政治が、この国から不当な差別や格差を払拭したのだ。
この日本は、ぼくら子どもの国だった。
「ようこそ、マモルくん」
クオン先生が微笑んだ。
老婆特有の疲れた笑みで。
「クオン先生、アイリちゃんが病気になりました」
「そう、それを言いに来たのね。でもね、それは病気じゃないのよ」
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