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ごめんね。最後まで一緒にいられなくて。
な、何で…尻なんか触られ……まさか…痴漢っ!?助けを呼びたいけど、でも…大きな声なんて出したら騒ぎになる…。それに満員電車の中だ。騒いだら痴漢なんて人混みに紛れていなくなる。俺が…我慢すれば……。
「君の尻、可愛いねぇ。お兄さん撫で回したくなっちゃう……」
はぁ…はぁ…と荒い息をしながら、その人は小声で話す。気持ち悪い……。そして、その人は中に手を入れてきた。
「……っ!?」
「あんまり大きな声出したら気づかれるよ?」
「…ふ……ぅ……」
声を押し殺しながら、目的地に着くのを待った。そして、やっと目的地に着いて俺はすぐに電車を降りた。ただひたすらに走った。怖かった…気持ち悪かった…そして何より、翼にどんな顔をして会えばいいか分からなかった。学校に着いて、俺は自分の席に座る。すると、教室のドアが開いた。
「一弥、おはよう。具合はもう大丈夫なのか?」
瑞季だった。瑞季は俺の座っている席に近づいてきた。
「あ、あぁ。大丈夫。」
「そう?何か顔真っ青だったから、まだ具合悪いのかと思ったよ。」
「…あ……大丈夫だよ…。」
俺は苦笑いしながら、そっぽを向いた。すると、瑞季が口を開く。
「嘘だな。」
「……へ?」「嘘ついてるだろ、一弥。大丈夫じゃねぇんだろ?何かあったんなら言えよ。」
「……っ」
さっきの瑞季の穏やかな顔が、急に一変する。何で分かっちゃうかな?そう思いながらも、俺は今朝の電車の中でのことを全て話した。
「そっか…大変だったな。」
「あぁ…。でも、もう大丈夫だよ。ありがとな。」
「このことは翼には言った?」
「いや…言ってない…。あいつに迷惑かけたくないから…黙っていてくれたら助かる。」
「言った方がいいとは思うけど。ま、分かったよ。俺からは言わないから安心して?」
「ありがとう…」
瑞季と話をしてると、優斗も来た。しばらく三人で話した。それにしても…翼遅いな。いつもなら、もう少し早く来ているけど…。そう思いながら待っていたが、結局翼は来ないまま先生が来てホームルームが始まった。
「えーと、今日は橋本君が、通院のため遅刻してくるそうです。」
翼、病院行ってるんだ…。そう思っていた。しかし俺は知らなかった。翼に危険が迫っていることを…
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