61人が本棚に入れています
本棚に追加
「大丈夫じゃないって…顔に書いてあるぞ?」
「……っ!?」
「なぁ、大丈夫じゃないならそう言えよ。俺、翼が辛そうにしてるところを見たくないんだよ。」
そう言うと、翼は俯いて口元を手で抑えた。…まさか……。
「翼?もしかして吐きそう?」
翼は声にはしなかったが小さく頷いた。
「そうか。トイレまで歩ける?」
「…多分……」
そう言って、翼はベッドからゆっくり立ち上がる。そして病室についていたトイレの中に入る。一人だけにしておくと危なかったので俺も中に入った。ドアを閉めた直後、何かが倒れる音が聞こえた。振り向くと、翼が倒れていた。
「ゲホッゲホッ…」
翼の口元から血が出ていた。血を吐いてる…!?
「翼っ!翼っ!?」
慌てて近づき、抱き起こすと翼はまた吐血した。かなりの量…俺の服も翼も血まみれになった。
「…どうしよう…俺だけじゃ無理だ……。お医者さんを呼ばないと……」
俺はそっと翼をその場に寝かせて、病室を出た。とりあえず、看護師さんを呼ぼう。俺は近くにいた看護師さんに声をかけた。
「すみませんっ!今いいですか!?」
「え!?えぇ……それより君、どうしたの?服が真っ赤よ…?」
「306号室に入院してる友達の具合が、悪くなって…さっきトイレで吐血して……」
「え…大変っ!今急いで先生を呼んでくるわ!悪いんだけど、翼君の元にいてあげてっ!」
「分かりました!」
俺は急いで翼の病室に戻った。トイレの中に入ると翼は苦しそうに胸を抑えていた。
「翼っ!」
近くによって、背中をさする。俺にはこれくらいしか出来なかった。すると、翼はゆっくり瞼を開いた。
「…一…弥……」
「翼…今お医者さん来るから…もう少し待って…」
「苦し…一弥……」
翼は泣き出した。こんなに辛そうな翼は初めてだ。
「…翼……」
すると、トイレのドアが開いた。さっきの看護師さんとお医者さんがいた。
「これは…容態が悪化しているかもしれん……」
「先生…翼は…大丈夫なんですか……?」
俺は恐る恐る聞いた。すると、お医者さんはトーンが低い声でこう言った。
「君、橋本君の友達だね?」
「は…はい……」
「そうか。君に一つ言っておくよ。」
何だろう…?声の低さで、とても深刻なことなのかと思いながら、お医者さんの言葉を待つ。そして、お医者さんは口を開いた。
「彼と一緒にいれる時間はもうないと思いなさい。」
最初のコメントを投稿しよう!