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「……え?」
「君も薄々気づいていたかもしれないが、彼の余命はあとわずか。容態が悪化したということはもう限界が来ているという事だ。」
そんな…じゃあ、翼とはもう……。そう思うと辛くなって俯く。
「このまま学校に通い続けたら、また悪化してしまうかもしれないな…。これからはまた病院生活を送ってもらって、それから抗がん剤治療も……。あぁそうそう、君。」
「…はい?」
突然呼ばれて俺は顔を上げる。
「彼にはこのことは黙っているように。それと、余命は何年もないことは心に刻んでおくように。」
お医者さんは、翼の点滴を変えながらそう言った。そして、お医者さんは看護師さんと共に病室を出て行った。俺の心がどんどん暗くなっていくのを感じた。
「なぁ、カナタ…カナタってば!」
「……ぅえ?」
「お前大丈夫か?さっきからずっと呼んでるのに気づかないし…」
「あー…ごめん。それで?何?」
「いや、ここの振り付けのところなんだけど…」
あの一件から数日、俺は次のライブに向けて忙しく、病院に行くことが難しくなっていた。優斗や瑞季によると、まだ目を覚ましていないらしい。俺は不安を抱えたまま、練習に励んでいた。
「カナタ、少し痩せた?」
「…は?」
突然同じアイドルグループのメンバー、サツキにそう言われて少し驚いた。
「な、何言ってんの?サツキ。そんなわけないだろ?」
「いやでも、サツキの言ってること分からなくもないな。カナタ、少し痩せてると思う。」
「俺もそう思う。」
「リョウヤ、ツムギまで…」
「ちゃんと食べてるのか?」
「食べてる…よ……いや…でも……」
心当たりがあって俺は途中で黙り込む。
「なんだよ?どうした?」
「いや…思えば、最近食欲なくなったというか…ないというか…少し食べる量減ったかも…?」
「やっぱり。」
「今日は俺らで夕飯食べに行くから、ちゃんと食べるか見といてやる!」
「あ、ありがとう…」
こうして今日の練習は終えて、俺はメンバーのみんなと夕飯を食べに行った。
「…ごちそうさま……」
「……えっ!?」
食べ始めて10分。俺は最初に来たラーメンサラダを少し食べただけで、ギブアップした。
「じょ…冗談だよな…?いくら何でも早いって…」
「ごめん…マジでもう食べられない。」
「嘘だろ…どうしたんだよカナタ!」
「うーん…カナタもしかして…何かあった?」
「……え?」
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