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「……っ…ゴホッゴホッ…」
「一弥…大丈夫?」
「う、うん…大丈夫……ゴホッ……」
翼は俺の背中をさすってくれた。
「無理しないで、寝てていいよ?」
「…いや、今日は一日中寝てたからもう眠くない。むしろ、夜に眠れるか不安なくらい。」
「そっか…あ、ご飯食べれそう?お粥作ったんだけど…」
「本当?食べたい。今日何も食べてないし。」
「まぁ、一日中寝てたんだもんね。今用意するから待ってて。」
「うん、ありがとう。」
翼が台所に向かっていった。俺はソファーに腰をかける。何か面白い番組はやっていないかなと思い、テレビをつけた。すると、夢の国のリポート番組がやっていた。
「夢の国…か……」
ボソッと呟く。翼と二人で行きたいな。そう思いながら見ていると翼がお粥を持って来た。
「お粥温めてきたよ……って、何見てるの?」
「…え?…あぁ……夢の国の紹介やってる番組。」
「夢の国か…いいな~…」
そう言ってテレビを見る翼の目は、羨ましそうに…けどどこか切なそうな感じもあった。
「翼の容態が大丈夫な時にでも、いつか二人で行かない?」
「う、うん…行きたい!」
「決まりな。翼と行けるの、楽しみにしてる。」
「僕も。頑張って病気治すよ!」
治す…。そっか…本人には言ってない…のか…。簡単に治りそうにないことを……。
「…そうだね…早く治るといいね。」
あの医者の言葉が、未だに頭から離れない。こんなこと…本人には言えない。言っちゃ駄目。しばらく俺の頭ん中はその事ばかりだった。
「じゃあ…僕そろそろ帰るね。」
「…あ、待って…見送りに行く。」
「え、いいよ。安静にしてないと。」
「せめて家の前ででも…」
「んー…それで体調悪化しても知らないからね?」
「大丈夫大丈夫!」
そう言って笑ってみせた。翼は苦笑いしながら帰る支度をして玄関に行った。
「早く治して学校来てね?寂しいから。」
「うん。今日はありがとう。嬉しかった。」
「それならよかった。じゃあまたね。」
「ばいばい。」
俺らは外に出た。翼は家の方向に歩いていき、俺はその姿を見ていた。翼の姿が見えなくなり、俺は中に入った。テレビをつけて見ていると、ドアが開く音が聞こえた。
「ただいま。あら、一弥。具合はどう?」
「おかえり…今朝より大分マシになった。」
「そう。よかった。それより…誰か来たの?台所が凄く綺麗になってるけど。」
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