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「ってか、あんた誰?」
「……」
「おいおい、それはねぇだろ!昨日の入学式に、この席の人のことを先生が話してただろ!」
「…言ってたっけ?興味無いことって覚えられないんだよね。」
「あのなぁ…っ!」
「もう、いいよ!…ごめんなさい……」
神宮寺君と赤城君が言い合っているところをこれ以上は見ていられなくて、思い切って会話を切った。その後、しばらく沈黙の時間が続いて気まずくなった。
「…ごめん、席外すね。」
その時間に耐えきれずに、僕は教室を出た。とりあえず、人目のない裏庭の建物の影に身を潜めた。
「はぁ…はぁ…」
呼吸が不安定になってきた。少し息苦しい…。
「…ぅ……ゲホッ…ゲホッ……」
息が苦しくなってきて辛い。元々喘息持ちで、咳が酷かったからこの程度の咳はなんともないと思ってた。けど、全然咳が治まる気配がしない。何で…?その時、誰かが近づいてきた。誰?ど、どうしよう…不安でその人のことを見ることができなかった。
「お前、こんなとこで何してんの?」
「……っ!?」
聞いたことのある声。それに優しく背中をさすってくれる手に一瞬息を飲んだ。おそるおそるその人に視線を向けると、神宮寺君がいた。
「な…何で…神宮寺君…が……?ゲホッゲホッ」
「俺がいたら悪い?」
「そ、そういうわけじゃ…ない…けど……ゴホッ」
「全く。急にどっか行こうとする時、あんた凄い真っ青な顔してたから、ちょっと嫌な予感がしたけどまさにその通りにだったね。」
「…ごめんなさい……」
「別に、俺もお前に謝りたいことあるしさ。」
「…え?」
なんだろう?神宮寺君が僕に謝りたい…こと……?
「その、悪かったな。強く言っちゃって…気分悪くさせたよな。」
「だ、大丈夫だよ!僕、その…言い合いとかに慣れていなくて…だから、少し困ったけど…でも全然、大丈夫だから!」
「大丈夫って言ったって、さっきすげぇ咳込んでたじゃん。」
「あ…これは、その……僕、喘息持ちでさ…だからよく咳込んじゃうだけなの。神宮寺君のせいじゃないよ。」
「…それなら、いいけど…。ていうか、もう大丈夫なのか?」
「あ、うん。大分落ち着いた。ありがとう。」
神宮寺君の優しさを知って、少しは仲良くなれたんじゃないかと思い、自然と笑みが出た。
「…それなら、よかった。」
神宮寺君はそっぽをむいて、そう言った。
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