第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く

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木葉刑事は、この屋敷で起こった事の一抹を知り始める。 どうやら、犯罪の拠点だったらしい。 (こりゃ、簡単な事件で終わりそうにないなぁ。 秋から大変な事件ばかりになりそうな…) ただ立って居る様に見える木葉刑事を離れた場所から窺った鑑識員の若い男性が、側を通り掛かる里谷刑事に。 「あの人、噂通りの人なんでしょうね。 他の刑事の方、手柄を取られて悔しくないんですか?」 唐突に言われた里谷刑事だが、木葉刑事の表情や見ている様子から何かしらを察してか。 「手柄って、誰が取られてるの? ウチの班の中じゃ、みんな貰ってる方だけど」 「へ?」 聞き返す男性へ、里谷刑事は二階を指差し。 「彼が隠し棚を見付けなきゃ、貴方も瓶内さんも失態ものだったかもよ」 「“隠し棚”?」 「早く上に行けば~」 驚いている彼の前から立ち去る里谷刑事は、そのまま木葉刑事の横に。 「なぁ~んか、イヤな胸騒ぎがする殺しだわね」 記憶を垣間見た木葉刑事だからか。 「その勘、的中してますよ」 「ん?」 彼を見た里谷刑事だが。 リビングの外を見た飯田刑事より。 「里谷、木葉、望月主任が来たから、遺体の調べが始まるぞ」 現場で、遺体の外見を検視する作業が始まると云う。 だが、木葉刑事は、 「飯田さん、ぞろぞろ全員で見る必要は無いでしょう? 自分は、聴き込みに回ります。 情報は、スマホに下さい」 と、言って里谷刑事を見る。 「聴き込みが待ってますから、外に出て話しましょう」 「あ、あらら、マジヤバい?」 木葉刑事の語り方が覚めていて、里谷刑事も難事件に成ると思った。 所轄より来た刑事と合流し、手分けすることでまた別れた最中。 メールで木葉刑事の視た記憶の内容を知る里谷刑事は、目撃証言をかなりしっかりと聴いて回った。 断続的に降る雪の影響か、外に出て掃除をする住人も目立ち。 夕方の頃合いでも色々と話を聴くことが出来た。 噂程度だが、あの家には不審な話が多い。 それに付随して、この辺りでは薬物のバイヤーや使用者の逮捕が最近に在ったなど、不安が聴けた。 さて、出動が3時頃。 付近の聞き込みをして回って2時間ほどすると、成城署に捜査本部が立った。 庶務課も忙しく、捜査本部の設立が遅れがちに成る事も屡々。 悪霊の事件の余波がこんなにも長引くとは驚きだが、本日は遠矢の死亡が負担になっている。 この激震は、死んだ広縞が犯人と判明した後の騒ぎにも似ていた。
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