第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く

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然し、警察の威信は回復している。 遠矢の起こした難事件もそうだが、過去の未解決事件やら未発覚事件の連続した解明が、その要因に繋がって居る。 広縞の事件と悪霊の事件で経歴に傷の付いた幹部も居たが、その他の幹部職員や総務課、広報課などの肩書きに就く者は、警察庁にも行けそうな回復の手応えで喜んで居るとも…。 そんな噂をする所轄からの応援刑事と、成城署の刑事課の者が話して居る時。 篠田班が捜査本部へやって来た。 “あら~最近は手柄を挙げ捲ってる篠田班だ” “最近だけじゃ無いですよ。 手柄だけで云うならば、あの飯田と木葉って刑事が揃った時からです” “てか、あの班ってよ、春先に懲戒解雇を含めて4人だったか総入れ替えしたって話だろう?” “それで膿が出たんだよ。 それからの活躍は凄い、今だ、黒星が無いしな” “では、その一課のエースチームに、手柄のおこぼれでも期待しますかね” 囁きが続く中、珍しい人物が現れた。 (おい、あれを見ろ。 ありゃ、八重瀬理事官だ) (遠矢の一件が粗方片付いたらしいから、九龍理事官共々、他の事件にも回され始めたんだな) (って、遠矢は今朝に自殺したぞ) (だが、弁護士が連れ出した矢先だから、警察に非難は無いさ。 刑事部長も、一課長も、有能な人材を遊ばせはしないだろう) 所轄の刑事達がヒソヒソ云う中、小柄でのんびりとした雰囲気の年配男性は、黒のスーツを来てノソノソと席に就く。 既に本部には、篠田班長と絡真(からま)署長が入って居た。 「篠田さん、今回はよろしく」 八重瀬理事官は、近い篠田班長に挨拶を交わして、次に署長とも挨拶を交わした。 そして、美田園管理官と云う女性と尚形係長が揃って、殺人事件の捜査会議は始まった。 黒髪を後頭部に結い上げる〔美田園 真樹〕《みたぞの まき》管理官は、警視庁の中でも花形の存在だ。 理知的な印象が溢れる覚めた中に、一抹の妖艶さすら香る37歳。 2年前から係長に上がり、主に性犯罪やら強盗他を主流に携わり、今年の春先の人事改編で管理官へ昇格した。 彼女の担当する事件には、前一課長の遣り方で偏りがあり。 第六強行犯の各係、性犯罪捜査係、火災・放火を担当する第七強行犯の各係とは、かなり面識が深い人物で在る。 また、郷田管理官と雰囲気は似て居るものの。 この女性から私的な会話は聴いた事が無いとの噂にて、‘氷結の無表情’と渾名されて居る。
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