第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く

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さて、捜査会議が始まり。 瓶内鑑識員が、これまでに判った情報を読み上げた。 ∴被害者は、昨日の午後1時から3時の間に、紐状の凶器にて背後から絞殺された。 ∴被害者の家に在ったアクセサリー類は、全て保証がされた宝石類で、名の通った店舗にて購入したと思われる。 また、一部の衣類及びリビング他家の中より、かなり大量の体液が採取されており。 夫以外にも交際する人物の存在を示唆している。 ∴被害者の物と思われるタンスより、不審な薬物が発見された。 簡易検査により、合成麻薬、大麻、脱法ハーブを粉末化して調合したものなど。 末端価格にて1000万円相当の量になり。 引き続き科捜研にて分析し、過去の押収した薬物と成分を照らし合わせるとの事。 ∴他、犯人は靴を脱いで上がって居る。 被害者の胃の内容物は、寿司と惣菜の一部、等々。 続いて、機捜の代わりに所轄と成る成城署の刑事課の課長より。 ∴被害者の夫は、年齢が10上の39歳。 スマートホン用のアプリケーションを制作する会社に勤務。 朝に電話で確かめた処、昨日は出勤したが。 今日は、まだ出勤せず。 ∴普段の被害者を見掛ける周囲の話では、姿は差ほどに派手では無いが。 かなり高価と思われるアクセサリー類を身に付け、周囲に買い物へ出掛けたりしていた。 近所付き合いは皆無に近いが、外を歩く時には挨拶程度はして居たとか。 だが、家族の内輪を話す事はほぼ無く。 近隣の住民の目撃では、度々に夫以外の男性が家を訪ねて来ていた模様。 但し、その男性も容姿に様々な証言の食い違いが在り、複数人が来ていたと思われた。 ∴被害者の名前で身分証明は在るが。 両親の名前が全く解らず、偽名の可能性が在る。 さて、その一連の情報を聴いた上で、美田園管理官は言う。 「皆さん、気を引き締めて捜査に当たって下さい。 今の情報を聴いただけでも、まだ見えない事が多そうです。 予断を持たず、しっかり情報を集めて下さい」 覚めた単調な物言いの美田園管理官は、尚形係長に顔を向ける。 頷いた尚形係長。 席を立ち上がり、手にした紙を見ては。 「では、役割を決める。 飯田は、所轄の者二人と夫の会社へ行き、聴き込みをして行方を追え。 市村と織田は、現場付近の防犯映像を見て不審人物を割り出せ。 今は鑑識課も忙しい、応援の者を三人一緒になるべく早く頼む」 二枚目の紙へ向かう尚形係長。
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