3人が本棚に入れています
本棚に追加
二人の年配刑事は、もう薄暗い中でライトを木に向けた。
「片岡さんや進藤さんなら、一発で解ったと思うンですが。 今見て、自分も改めて違和感に気付きました」
小太りだが背は高く、体格の造りは立派な長谷部刑事。 短い角刈り頭ながらに、寒さも感じないと前へ。
「足を置く石にも、表と裏な」
薄ぐらい中でライトを照らしながら、半信半疑と雪を掻き分け四角い石を芝生へと外すと。
「おいっ、こりゃあ白い粉・・、小麦粉や片栗粉じゃ無いな」
と、ビニール袋で二重に封されたものを取り出す。
それを見て、別の石を退かそうとしていた司馬刑事も驚いた。 長谷部刑事の脇に来て、取り出される白い粉の袋を眺める。
「此処だけで、大きいのが6袋も…」
長谷部刑事が取り出した袋を持ち。
「全部合わせて5キロぐらいだ。 おいおい、もしかしてこの立派な家は、‘麻薬御殿’ってか?」
苦笑いする木葉刑事は、口にペンライトを咥えながら低木の鉢植えを引き抜いて鉢を調べ始めた。
そして。
「う~わ、こりゃ凄い。 注射器、錠剤、乾燥大麻」
たった二ヶ所を探してこの当りとは…。 またまた、驚いた司馬刑事と長谷部刑事。
寒い最中で鉢ごと運び出す木葉刑事が。
「あ~あ、端ッから薬物取締課に任せればイイのに…」
木葉刑事の愚痴に、年配者二人は笑う。
「いいじゃないか、これも仕事だ」
と、やる気十分に成った長谷部刑事。
一方、違う庭の石を持ち上げるのが大変な司馬刑事は、
「俺は、一課の刑事さんに一票。 重いぞ、この石は・・」
と、退かしてみれば。
「此処にも有るぞ」
木葉刑事を軸に、明らかにおかしいと思われる場所を調べると、麻薬らしきものやそれに関する物が次々と発見される。 家の裏側に放置された粗大ゴミ化した洗濯機は、ドラムを抜くと脱法ハーブの乾燥させたものが、真空パックされて保存されていた。
あの隠し棚を調べた瓶内鑑識班は、他に室内で麻薬を探したらしいが。 どうやら保存倉庫は、外の庭だった様子。 年配刑事二人が全ての石を退かし、木葉刑事が植木鉢と洗濯機を調べた時点で。
「もう組対室、薬物取締課の仕事だよ」
薬物の事を調べるだけ、手が足りないと云う木葉刑事。
長谷部刑事も司馬刑事も、40キロ以上の薬物が出ては当たり前と。
「遅いな、鑑識」
と、長谷部刑事が休み。
「木葉さん、管理官に御連絡を~」
と、司馬刑事が打診した。
最初のコメントを投稿しよう!