第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く

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スマホを取り出す木葉刑事は、捜査本部へと連絡する。 「もしもし、現場の木葉です」 すると…。 「本部の八重瀬だ。 木葉刑事、何か見つかったかね?」 「それが、薬物らしき粉の袋が、え~30以上。 錠剤150粒以上。 注射器が30本以上に、乾燥大麻らしき他に脱法ハーブと思われる数種類発見。 出来れば、もう薬物取締課に連絡を…」 「あ、そ・・そんなに見付かったのかね?」 「司馬さんの言葉を借りるなら、この被害者の屋敷は‘麻薬御殿’かも」 「おっ、おい、発見した薬物は無くさない様にしなさい。 鑑識班は、既に警察署を出たからな。 美田園クンには、こっちから云う」 「了解。 それから、八重瀬理事官」 「ん?」 「手の空いて居る捜査員や巡査が居たら、一人二人は応援で此方へ頼めませんか」 「どうしてだね?」 「この保存量は、正直な処ヤバいですよ。 確か、この界隈で薬物を買った主婦が、売人とセットで逮捕されましたよね? 殺人がこの家で在ったと知れたら、薬物を取り返しに誰か来る可能性も有ります。 鑑識班にも、護衛が必要かと」 「あ、あぁ、確かにそうだね」 柔らかい物腰をする八重瀬理事官は、電話を終えると直ぐに動いた。 さて、連絡を終えた木葉刑事は、バルコニー風のベランダに座る二人の年配に近付くと。 「あの、処で・・ものは相談なんスけど…」 「ん?」 「まだ、何か?」 木葉刑事の話を聴いた二人の刑事は、しっかりと頷いた。 その眼や顔は、厳しく鋭い刑事のモノだった。 それから少しして、すっかり陽も暮れた8時半過ぎ。 鑑識車両が到着して、瓶内班長以下3名の鑑識員が降りた。 「どうも、瓶内さん」 庭先の灯りが照らす敷地から手を上げた木葉刑事に、階段を上がって来た瓶内鑑識員は半眼を返し。 「出来る事なら、さっきの時に見付けて欲しかったわ。 夜の鑑識作業って、意外と大変なんだけれど」 「すいません。 日中に見た時は、雪のせいで朧気なものだったので…」 然し、既に見付かった薬物を見た瓶内鑑識員は、その量や種類に眼を見開き。 「私もまだまだね。 恥ずかしい…」 と、小声を。 そんな瓶内鑑識員に近付く木葉刑事は、 「一応、他に怪しい場所をメモしました。 これを頼りに、探して下さい」 と、紙切れを渡す木葉刑事。 然し、その文面を黙読した瓶内鑑識員は、疑う様な眼差しを返すと。 「解ったわ」 短く返すのみ。
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