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二人のやり取りを聴いた司馬刑事が。
「木葉さん、そろそろ飯にしませんか。 せめて、パンだけでも」
頷いて敷地から道路に出る木葉刑事は、現場保持の為に立つ警官に敬礼すると乗って来た車の前で。
「なら、何か買って来ますよ。 夜分遅くまで鑑識作業は続きますから、交代の人員が来るまではもう少し残らないと」
証拠採取が終わった後の非常線は、もう屋敷の敷地に限られている。 だが、まだ野次馬みたいな見物人もチラホラし、帰宅する会社員や学生も道路上に見えていた。
掻いた汗をハンカチ拭う司馬刑事。
「買いに行くなら付き合います。 一課の刑事さんを足に使ったなんて、知られたく無いからね」
「じゃ、私は此処で待ちますよ」
同じくコートの腕で汗を拭う長谷部刑事は、乗ってきた車に寄り掛かった。
現場の家の前は、真ん中に白線の無い二車線並みの道路。 右を見れば、斜めに先が見えなく成る。 左に行けば、100メートルほど先が交差点と成り。 片側一車線の二車線道路にぶつかる。 その道路を右に曲がれば、少し先にコンビニが在るのだが…。
そのコンビニの方向へ消えた木葉刑事と司馬刑事だが・・数分後。
丸顔で、如何にも‘柔剣道をやってます’、と云わんばかりに体格のガッチリした若い警察官を相手に。 職務中ながら無駄話をして居る様に見えた長谷部刑事だが…。 携帯がワン切り二回されると、現場前の幅が在る道路を右へ、斜めに先へ伸びる方へと歩き始める。 すると、その道の先。 道路左側に並ぶ家の中で、赤茶色の外壁をした家の外れに在る電柱に潜む男が、驚く様に逃げ始めるではないか。
その様子は、野次馬に出てきていた近隣の住民も見ていた。
逃げるトレーナー姿の男だが。 彼の走り出した先にはなんと、回り込んでいた司馬刑事が行く手を塞ぐ様に向かって来る。
(やべぇっ、挟まれた!)
だが、この場所の丁度、道路の片側。 被害者宅の並びが在る方には小道が在る。 トレーナー姿の男は、そっちに逃げようとしたが…。
「はいはい、もう諦めようね~」
突然の間合いにて、小道の影から出て来た木葉刑事が現れて足を出す。
「うわっ」
不意に伸ばされた木葉刑事の足に、自身の足を引っ掛けた男はアスファルトの上にすっ転んだ。
「何で逃げるっ」
追いついた長谷部刑事が男に掴み掛かり。 転んだ彼の腕を取る木葉刑事が、
「話は署で聴くよ~」
と、男性の肩を叩いた。
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