第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く

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男性を立ち上がらせる長谷部刑事は、 「手錠、どうぞ」 と、木葉刑事を立てるも。 「いえいえ、10年は点数が着かない身分なんで、其方でお願いします」 逮捕を譲った木葉刑事。 さて。 「離せコラぁっ! テメェ等ぁっ、薬を返せっ!!!!」 住宅街の中で平然と喚くトレーナー姿の男。 薬物と関係が有るのは間違いない。 被害者宅の並びに沿う幅広い道路に出て、覆面車両へと彼を連れて行こうとする時だ。 (ん? この違和感は、殺意?) 背中を突き圧す様な、危険な悪寒をビリッと感じた木葉刑事は、背後の道路へと振り向く。 すると、斜めに見切れて行く道路の先から、法廷速度を明らかに超す勢いで白い車が猛然と此方へ…。 「ヤバいっ、まだ居た!」 その声鋭い声で、年配の刑事二人も振り返る。 「早くっ、横の家の敷地にっ。 彼を連れて入って!」 最も間近の、灯りが点らない家を指差した木葉刑事は、鑑識車両やら自分達の乗って来た車の方に走り出す。 「逃げろっ! 家の敷地に入れ!! 暴走車だっ!」 路上には、まだ野次馬の近隣住人らしき人も居るし。 スマホ片手に、帰宅する学生や社会人も数人居た。 「前を見ろっ!!!! 暴走車だっ!! 隠れろっ!!!! 隠れるんだっ!!!!!!」 普段の木葉刑事とは思えない大声が、現場周辺に響いた。 無論、薬物の捜索をしていた瓶内鑑識員にも聞こえた。 一方、無関係ながら慌てて間近の家の敷地に押し入った長谷部刑事と司馬刑事は、走る車両を見ようとしたが…。 家の前に差し掛かる車は、スピードを落としていて。 黒いフィルムの張られた窓が開かれて、そこから伸ばされた拳銃が先端が外灯で見える。 「不味いっ」 長谷部刑事が、捕まえたトレーナー男と司馬刑事を庇う。 走り去る瞬間に、連続発砲した車内の誰か。 (え゛っ?) 住民に避難を叫ぶ木葉刑事は、周囲に発砲音が4・5発響き、驚いて振り返った 。 だが、白い車はそのままスピードをまた上げて走って来る。 (街中で発砲って、ムチャクチャだっ) もう暗い最中、電灯の灯り頼みで車のナンバーを覚えようと路上のど真ん中に仁王して、車を対峙して見た木葉刑事。 ぐんぐんと迫る車は、木葉刑事を避ける雰囲気など何処にもない。 右へ左へと反復して、ギリギリで横に飛ぶ彼。 更にスピードを上げた車は、鑑識車両に迫って行く。
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