第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く

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12月も最後の週へ入る頃。 有賀のニュースは、今も国内にじんわりと不穏な空気を吹き込んでいる。 過去の事件に遡って取材し、巡査部長射殺事件までもほじくりかえすマスコミ。 一方で、毒島依子の事件も注目を集めていた。 その事件を調べた木葉刑事には、また根も葉もない噂が囁かれた。 さて、マイナスの空気を東京に届ける風が強いこの日。 そのニュースを見ている者が警察庁に居た。 誰でもない、あの鵲参次官だ。 薄暗いモニタリングルームにて、独り用のリクライニングチェアーに座る彼は…。 (木葉なら、これぐらいは訳も無い。 悔しいのは、茉莉などが側に居ないことだ。 あいつ等が居れば、有賀も捕獲しただろうに…) モニターの灯りに照らされる鵲参次官は、何処か遠くを眺めている様で、屈託が顔に浮かんでいる。 今も、彼はG(ゴースト)の関わる事件を調べている。 茉莉隊員が所属するチームの隊長や参謀役とは昵懇で、密かに情報を貰っている。 だが、今年はG案件が少なかった。 幽霊が悪霊に変わる前に、事件が次々と解決したお陰だろうか。 ま、犯人を悪霊に殺害されてばかりいたら、普通の人間にはどうしようもない。 然し今は、ニュースを眺めるだけの鵲参次官。 その場に居れない自分の身には、もどかしい以上の苛立ちが有る。 (俺が現場を仕切れれば、木葉をもっと有効活用するんだが…。 あいつの特殊能力を知れば、麻薬を打ったかの様に突き進める。 知ると知らないでは、全く違うだろうに…) 今の彼の現状を良くは把握してない鵲参次官だから、木葉刑事の今の扱われ様を知らないらしい。 ま、一部が云うバカな噂が木葉刑事を取り巻いているのは、人の世の中だから仕方ないことだが。 また、木葉刑事の待遇を良くも悪くも言わないのは、監視する茉莉隊員の気遣いである。 茉莉隊員は鵲参次官の腹を察していて、彼の欲望が暴走しないように上へ言っていたのだ。 警察庁では、太原長官が木葉刑事の様子を知りつつ、有賀の時も警察庁の公安部が事件を奪うことに歯止めを掛けたりしている。 木葉刑事を取り巻く人間模様は、警視庁だけでは収まらない。 だが、彼の特殊能力は、トップシークレットだった。
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