第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く

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        1 晦日も間近、氷点下日の今日、26日。 「さぶいっ、さぶいっ」 班に割り当てられた部屋に来た里谷刑事は、もう4人が揃う部屋に入った。 「嗚呼っ、楽園っ!」 オーバーな表現に、如月刑事、市村刑事、八橋刑事は、苦笑いを返した。 一方、木葉刑事だけは、 「もしもし、鴫さん? あ、はい、はい・・はい、解りました」 と、スマホを切った。 その様子を見た八橋刑事は、ギョッとした顔をして。 「まさか、鴫さんとデートですか?」 先を越されたと思う市村刑事は、密かに鴫鑑識員を狙う一人なだけに、 「木葉、最初は慎重に、紳士を振る舞え」 と、自身でもやった事の無い清いデートを薦める。 一方、まだ一人の里谷刑事なだけに。 「ぬ゛ぉぉぉっ、枯れ葉なんかに先を越されるのかぁっ」 と、吼えた。 然し、冷ややかな表情の木葉刑事を見詰め、如月刑事が。 「ど~したよ。 デートって顔じゃ~ないな?」 すると、木葉刑事はゆっくり体勢を皆へ向けながら。 「恐らく、午前中のニュースに出ると思いますが…」 真面目な話し方に、4人の表情も真面目なものに変わる。 「どうした?」 市村刑事が聴けば。 「たった今、遠矢が飛び降り自殺したそうです。 弁護士が指定した病院の最上階から…」 これは劇的な幕切れと、四人の刑事達は黙る。 其処へ、子供の話をしながら笑う織田刑事、飯田刑事、篠田班長の声がすると。 「もう、我々の手から遠矢は離れてます。 ニュースで驚きましょうかね」 何処か醒めた物言いをした木葉刑事が、白々さえ感じる態度でコーヒーを煎れに立った。 班に割り当てられた部屋に、数日ぶりに全員が揃う。 遠矢の死を知った面々と知らない面々の温度差は、その後に話す会話へ如実に現れた。 そして、不自然な理由のこじつけ、タイミングの間の悪さを在り在りとした里谷刑事と八橋刑事がTVを付けると。 ものの数分後、遠矢の自殺が速報で流れる。 岩元、遠矢、警察の敵と云えた二人が死亡した。 まるで今年の仕事納めが来た様に思え、篠田班長を筆頭に押し黙った篠田班の面々だった。 その沈黙を破ったのは、市村刑事。 「何だか、今年の締めくくりみたいだ。 出来れば、このまま平穏無事な正月を迎えたいよ」 だが、コーヒーを片手にタブレット端末の画面を横目にした篠田班長が。 「そういくか? 既に、昨夜から死人の出た事件が4件も起きてるぞ」
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