第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く

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遠矢死亡に気の抜けた里谷刑事で、デスクにグダァ~と顔を横にし。 「なぁ~んか、とんでもない事件が割り当てられそう~」 お茶で体を温める織田刑事が。 「里谷、縁起でもないことを言いなさんな」 如月刑事も同調し。 「現実になるかも」 飯田刑事は、遠矢の自殺が速報で流れるTVを眺めるつつ。 「嫌気とは、のんびりしたクリスマスの反動か? ま、こっちも娘と餅つきをする予定だから、年明けまで面倒な事件は勘弁願いたいがな」 と、面倒な事件を敬遠したい雰囲気を出した。 遠矢自殺の速報に、篠田班の眼がTVへ集まる最中。 篠田班長の傍に寄った木葉刑事で。 「班長」 「ん?」 「昼間、1・2時間ほど外出します。 ちょっと詩織ちゃんに呼ばれてるんで…」 班に配られたタブレット端末機のモニターに触れて操作していた篠田班長。 「ほう、古川さんのお嬢さんと・・な」 座って居る里谷刑事は、目を細めてニヤニヤし始め。 「デートか? おい、デートか?」 すると、どうでも良さそうな顔の木葉刑事は自分の席に戻りながら。 「詩織ちゃんとそのお友達が、“一緒にどうですか~”って誘ってくれたんス」 「へぇ~」 「事件でも無いのに断ると、後が面倒ですからね」 遠矢が自殺し、気が抜けた市村刑事より。 「何が“面倒”なんだ?」 コーヒーやお茶を手にする面々も居る其所へ、コーヒーを一口した木葉刑事が。 「フルさんが亡くなった一件で、詩織ちゃんは警視庁の上役からも名刺を貰ってます。 その気になれば俺が仕事かどうかぐらいは、直ぐにバレますよ。 詩織ちゃんをテキトーにあしらったなんて云われたら、俺は古さんの信者から吊るされる…」 その物言いに呆れる市村刑事。 「木葉、あんな美少女と食事に行けるだけでも有りがたく思え」 「既に定期的に会ってますからね。 今更に彼女とデートなんて、無駄金を遣う様なものです」 「おまっ、お前なぁ」 「市村さん、それとも俺に詩織ちゃんを口説けと?」 「んっ、んん・・そりゃ~何となく不味い様な…」 「詩織ちゃんは、在る意味では危険な相手ッス。 もう、検事か裁判官で志望が固まってます。 あんな出来すぎた娘が法律を学んだら、鬼に金棒か、イヤ鉄砲ッスよ。 頭が上がらないのは目に見えてるのに、そんな命知らずな真似は出来ません」 情けないことを言う木葉刑事に、織田刑事が呆れ果て。 「だぁーめだこりゃ、一生独身だわ」
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