第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く

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現場は、世田谷区成城の学園にも徒歩で苦もなく行ける場所の一戸建て。 亡くなったのは、モデルの様に背の高めな主婦である。 亡くなっていたのは、客間らしき和室であるが…。 さて、今日は珍しい人物が現場に居た。 女性の鑑識班班長、〔瓶内 千紗〕《へいない ちさ》班長である。 「あ~らら、やっと篠田班と当たったわ」 長い長い髪を一本にして居る高身長の40代前半。 飯田刑事を若い頃から好きだったが、飯田刑事には全く相手にされなかった。 この飯田刑事は、気が強かったり高圧的な相手を嫌う傾向に在る為だ。 知った顔と云う市村刑事は、 「千紗さんが担当とはね。 遠矢の事件も一段落したか?」 と、近付く。 一方、まだ運ばれていない遺体を見下ろす飯田刑事が。 「死亡は、何時ぐらいか?」 瓶内鑑識員は、ちょっと大人びた気怠い雰囲気を魅せながら。 「死後、24時間は経過してるらしいわ」 「“らしい”?」 「今年から、現場に医師免許を持つ職員が入る事に成ったの。 その人の見立てだと、内臓の温度からして昨日の午後、昼の1時から3時の間じゃ~ないかって。 私も、同じ意見」 タブレット端末を持つ八橋刑事は、既に入って居る情報を見るまま。 「通報が昼の2時38分って為ってますが。 第一発見者って…」 と、呟けば。 ゴム手袋を外す瓶内鑑識員は、全くやる気の無い様にも見えながら。 「そ~れが、何処にも居ないのよ」 此処で、全員が瓶内鑑識員を見返す。 家の前には、立正の警察官二人しか居なかったのを思い出す織田刑事。 「まさか、逃げちゃった?」 里谷刑事も、これは面倒と。 「あちゃ~。 でも、主婦って言ってたなら、ダンナは何処?」 すると、証拠品を並べる台を指差した瓶内鑑識員。 「機捜も来てないから、それはそっちに任せるわ。 ある程度の証拠品採取は終わってるから、指紋を着けない様にしてなら見回ってもイイわよ」 現場の部屋からリビングへと去る彼女を他所に、木葉刑事は遺体の脇に屈むと。 「ね、織田さん」 「ん?」 「こんな和室で被害者は首を絞められてますが。 この被害者、顔のメイクがしっかりしてる気がしますけど…」 近付いて来た織田刑事は、被害者の部屋着のカジュアルなスカートをペンで捲ると。 「下着は紫のスケスケ・・、然も布団の在る客間。 もしかしたら、勝負物かもね」 「それって、相手はダンナさんですかね?」
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