第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く

7/39
前へ
/39ページ
次へ
「まぁ、ダンナの仕事に因るけど。 普通なら、寝る前に着替えでイイんじゃ~ない? 昼間っからコレなら、誰かさんとヤル気満々だったかもね」 二人の会話から、 “不倫も在り” と、感じ取る刑事達。 押収されたスマホにはロックが掛かり、日常の様子を現す類いの手帳も無し。 色々と探し回って、旦那の会社に関する情報は鑑識員が得たらしいが…。 被害者の私室と成る二階へ向かった篠田班。 女性の部屋らしい室内を見回した木葉刑事は、新品の桐のタンスを見ると。 「あら、コレって・・シークレットショーケースかな?」 一緒に入った八橋刑事と里谷刑事は、木葉刑事が桐のタンスに近付くのを見る。 里谷刑事は、立派な桐のタンスを見て。 「‘シークレット・ショーケース’って、隠し戸棚の在るヤツの俗称よ。 コレは、桐のタンス」 然し、タンスの側面に回った木葉刑事は、その材質を調べる様に触れると。 「桐のタンスで、模様がトランプって変わり過ぎでしょ。 それに、引き出しの奥行きが、寸足らずみたいって・・・これか」 つなぎ目が解らない見た目ながら、或る場所を押さえて上に持ち上げた。 すると、まるで冷蔵庫のドアを開く様にして、桐のタンスが動いた。 初めて見る仕様の箪笥に八橋刑事は、 「うわ、隠し棚」 と、下に降りた鑑識員を呼びに行く。 一方、納得が行かない里谷刑事。 「何で解るのよ゛」 中身を覗く木葉刑事より。 「以前、二課が組事務所からこんな棚を押収しまして。 迅と雑談していたら、写真で見せて貰ったンです。 その時は、‘葵’に‘村正’だった様な」 「な゛に゛それっ」 其所へ、八橋刑事に呼ばれた瓶内鑑識員が入って来て。 「葵は、徳川家の家紋。 それで、徳川家に妖刀と嫌われたのが、村正って云う人物が造った刀なの。 ま、今時はどうでもイイ話よね」 部屋に入って来るまま説明をした。 開かれた三段の棚を見る木葉刑事は、スケスケの下着やら海外の化粧品やらに、なかなか作りは良さそうなアクセ類と。 棚に置かれたモノを取り出しながら。 「被害者って、もしかすると風俗嬢か、ホステスやらギャバクラ嬢だったかも。 結婚して辞めても、パトロンとは繋がりが切れてなかったりして~」 と、大量の海外製品の避妊薬まで取り出した。 すると、ペンライトで首筋を小指で掻く瓶内鑑識員は。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加