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……まさか、どこの誰ともわからないαかβに連れ込まれたりしているのだろうか。
それだけは考えたくないと、最悪の懸念を追い払うように頭を振ってから、龍哉は少し歩調を速めた。
甘い匂いは、柚斗の居場所に近付けば近付くほど濃厚になってくる。最早携帯の画面を見なくても、龍哉はその匂いを追って目的地まで辿り着くことが出来た。
「此処……?」
着いた先は、築五十年ほどは経過していそうな、古びた二階建ての木造アパートだった。
どう見ても東條の家とは無縁そうなこんな場所に、何故柚斗が居るのだろうと龍哉は首を捻ったが、一階の突き当たりの部屋から、一際強い匂いが流れ出している。GPSが示す位置と照らし合わせても、恐らくこの部屋の中に柚斗が居ることは間違いない。……問題は、誰がこの部屋へ柚斗を連れて来たのかということだ。
柚斗の境遇を考えると、下手に警察などに連絡すれば、却ってややこしいことになってしまう。せめて柚斗が今置かれている状況だけでも把握出来れば…と、龍哉は携帯の電話帳から柚斗の名前を選択する。
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