エピローグ

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 西園寺の家に引き取られてすぐに通信制高校に入学した柚斗は、持ち前の記憶力の良さや頭の回転の速さでみるみる学力を伸ばし、きっちり三年で高卒資格を取得した。  父の龍馬は大学に進学するなら援助すると言ってくれていたが、柚斗は通信制高校に通う傍ら、ずっとやってみたかったのだという執筆活動に手を広げ、そして卒業とほぼ同時期に書き上げた小説が、見事某出版社の新人賞に輝いた。 『ガラクタの恋』────そう名付けられた物語の舞台は、限りなく人間に近い感情を備えた、AI搭載ロボットが活躍する近未来。  感情豊かだが動作不良の不具合があるロボットと、多様な動作が可能だが感情の乏しいロボット。そんな二体が、不良品として送られたスクラップ工場で出会い、廃棄処分から逃れる為に互いを補い合いながら、やがて『恋』という一つの感情を共有し合うまでの物語だった。  柚斗曰く、「卓巳さんと出会ってからの体験を、フィクションとして書き起こしただけなので、この話が出来たのは卓巳さんのお陰です」とのことだったが、柚斗らしいピュアな視点で綴られたその物語は、まるで柚斗から卓巳への真っ直ぐな告白のようで、卓巳は嬉しい反面、少しこっ恥ずかしくもあった。     
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