エピローグ

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エピローグ

 そんなデビュー作をきっかけに、若き作家として才能を開花させた柚斗は、執筆活動に集中出来る環境に居る方が良いだろうということで、この別荘へ移り住むことにしたのだ。高台に建てられたこの別荘の窓からは海も見渡せる為、卓巳も昔から気に入っている場所だった。  ……だが、柚斗を西園寺の家から連れ出した理由は、それだけではない。  車から降りた柚斗は、家に入るなりそのままテラスへ直行する。そしてそこに干してあった洗濯物を嬉々として取り込むと、リビングの床へ洗濯物の山を作り、ボフッとその上へダイブした。これは、晴れた日に柚斗が必ずする、お決まりの行動だ。 「あー……今日もいい匂い……!」  洗濯物の山に顔を埋めたまま、柚斗は心底幸せそうな声を上げる。  蔵に居る間、洗濯物を外に干したことがなかった柚斗は、西園寺の家に居た頃から外干ししたばかりの洗濯物の匂いが大好きで、毎日「干させてください!」と目を輝かせては、家政婦を困惑させていた。  それ以外にも掃除や料理など、柚斗はとにかく興味を持ったものは何でもやりたがったので、どうせなら気が済むまで自由にさせてやりたいと卓巳は思った。     
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