第二話

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 それから食事以外にも、これも曜日は特定できないけれど、きっちり七日に一度、本や衣服や生活消耗品などが差し入れられるのだけれど、食事やそれらの物資を運んできてくれているのが誰なのか、そもそも毎回同じ人物なのかということも、柚斗は知らない。シャンプーや洗剤など、急遽足りないものが出たときや、届けられた衣服のサイズが合わないときは、食べ終えた食事のプレートにその旨を書いたメモを添えておく。すると、次の食事の際には迅速に希望した品が一緒に届けられた。  届けてくれた相手には心の中で礼を述べるだけに留めておいて、一切干渉しないのがここでのルール。柚斗が蔵でのルールを守らなければ、柚斗に関わった相手が困ってしまうのだということを知ってから、柚斗は敢えて関わろうともしなかったし、毎日蔵を訪れる『誰か』も、役割を終えれば足早に立ち去っていく足音が小窓越しに聞こえるので、きっと向こうも関わりたくないのだろうと思うようになっていた。  柚斗が体調を崩したときにやってきた医者でさえ、診療後は逃げるように蔵から出て行った。その医者の為に蔵の入り口を開けたのが誰なのか、弱っていた柚斗にはそれを確かめることも出来なかったけれど、何はともあれこの蔵には誰もが極力近付きたくないのだろうということだけは、ハッキリとわかった。  だから、そんな蔵へ敢えて近付いてきた上に、固く閉ざされた扉に触れようとする人が居たことに、柚斗は何より驚いた。お陰でつい決まりも忘れて咄嗟に声を掛けてしまったのだが、皆が柚斗との関わりを避けるように離れていく中、あろうことか相手の方から質問が返ってきたので、柚斗はこれにもビックリして、ついうっかり言葉を返してしまったのだ。     
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