第二話

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 声を掛けたくても、人目が気になってそれが叶わないもどかしさに、卓巳は無意識に拳を握り締める。柚斗の顔が見られないのは残念だが、今日の目的は、この先必ずこの陽射しの下で、柚斗の顔を見る為の布石だ。  そう自分に言い聞かせながら、卓巳が扉脇の小窓の取っ手に手を掛けると、龍哉の予想通り、小窓は郵便ポストのようにすんなり引き開けることが出来た。 (ちゃんと気付けよ……)  そんな想いを込めて、卓巳は小窓の隙間からスマホとその充電器、それから龍哉の提案通りにモバイルバッテリーも添えてそれらを素早く滑り込ませると、名残惜しい気持ちを抑えつつ、林の小道をゆっくりと引き返した。
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