第三話

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 それから、束ねられた白い……紐? 首を捻りながら指先で触れてみたそれは、紐と言うには硬すぎる。二階の唯一の照明である電気スタンドのコンセントと同じで、二本の金属が片側についているから、恐らくこれはコンセントコードだ。  そしてあと一つは、白い箱よりもっと薄くて細長い、銀色の板のようなもの。手に取ってみると、これも板と呼ぶには厚みの割に重かった。見た目といい、質感といい、木製ではないことは明らかだった。  片面には中央にアルファベットが数文字並んでいるだけで、もう片面は真っ黒だ。  これらが一体何なのか、どのように使うものなのか、それを説明するようなものは添えられていない。確かめるだけ無駄だろうと思いつつ、一応そうっと小窓を中から押し開けて外を覗き見てみたが、そこに人の姿はなかった。  昨日差し入れそびれた物なら、毎度のごとく今日の食事と一緒に添えられていたはずだし、だとしたら何故急に、こんな用途も何もわからない物が届けられたのだろう。  持ち上げたり、引っ繰り返してみたりと、それがスマートフォンだとは知らない柚斗は、初めて見る謎の『板』を色んな角度から眺めてみる。その拍子に偶然柚斗の指が電源ボタンに触れ、それまで真っ暗だった面が突然パッと照明のように明るくなった。 「……っ!」  驚いた拍子に『板』を落としてしまいそうになり、慌てて両手で抱え直す。 「……光、った……?」     
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