第三話

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第三話

 ───カタン。  静かだった蔵の中に、不意に微かな物音が響いた。 「……?」  穏やかな陽が射し込む二階の窓の近くに座って、昨日差し入れられたばかりのファンタジー小説に没頭していた柚斗は、その音で一気に現実世界へ引き戻される。  これまでの経験から察するに、恐らく小窓から何かが差し入れられた音だろう。けれど、だとしたら妙だ。  昼食は少し前に食べたから、夕食まではまだまだ時間があるはずだし、食事以外の定期的な物資の差し入れは昨日届いたばかりだ。  今日は本来なら、食事以外何も届くはずのない小窓から聞こえた物音。一体何なのだろうと、柚斗は読んでいた本に栞を挟んで床に置き、恐る恐る階下へ下りてみる。  隙間だらけなので到底隠れることは不可能なのだが、それでも階段の手摺に身を隠すようにしてそろりと小窓に据え付けられたカウンターを見ると、そこには見たことのない物が並んでいた。 「……なに、アレ……」  眉を顰めて暫くじーっと眺めてみたが、取り敢えず動くことはなさそうだったので、柚斗は意を決して小窓に歩み寄り、カウンターに並ぶ謎の物体をまじまじと見詰める。  一つは、白くて四角い箱のようなもの。     
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