第四話

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第四話

「ど、どうなって……?」  パキン、と小気味よい音を立てて呆気なく壁から外れ、雑草の伸びた地面へと落下し、そこで更に無残に砕け散った鉄格子の成れの果てを見下ろして、柚斗は呆然と呟いた。  毎日塩水をかけ続けている内に、余りにも色が変わり果てた鉄格子の状態が気になって、ほんの少し押してみただけのつもりだった。だって卓巳に出会うまでは、いくら柚斗が窓の外を覗こうと必死に押しても引いても揺すっても、鉄格子は外れるどころかピクリともしなかったのだ。  それが、ただ卓巳に言われるまま、毎日塩を混ぜた水をかけ続けただけで、こうも簡単に外れてしまうなんて、柚斗には未だに信じられなかった。  ごく簡単な手順で出来上がった液体が、頑丈だった鉄格子を呆気なく破壊してしまうとは、それこそまるで魔法使いにでもなったような気分だ。  動揺の余り、鉄格子の外れた窓の写真と共に携帯で卓巳にメッセージを送ったが、卓巳の方はこの結果を端から想定していたようで、「OK。カメラでバレないようにだけ気を付けろ」と落ち着いた返事が返ってきた。     
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