世界の始まり

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世界の始まり

「進路希望調査……か。」  今日課された宿題を思い出して、憂鬱になる。もう高校二年生なんだから、そろそろ将来について考えないといけないのは分かっている。でも、私には夢なんてない。  大学へ行って勉強したいとか、なりたい職業に就きたいとか、そんなこと何も考えずに今まで生きてきたんだから当然だ。  私に特技があれば話は変わってくる。例えばスポーツが得意ならスポーツ選手を目指せばいいし、ゲームが好きならプログラマーになるための勉強でもすればいい。でも、私に誇れるものも熱中するほど好きになった趣味もない。何か努力をすることもなく、ただのうのうと生きてきた人は何をすればいいんだろう。何を目指せばいいんだろう。  帰ってお母さんに相談しようかな。いや、どうせお母さんは遅くまで帰ってこない。うちは母子家庭で、私と生活するために頑張って働いてくれるのはいつも尊敬しているが、お母さんと話すことは滅多にない。  せっかくの休日もどこかへ出かけることもなく一日中休んでおり、まるで一緒に暮らしているという事実を忘れてしまいそうだ。子供の頃はあんなに大好きだったお母さんは、今では遠い存在に思える。     
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