死にたがり魔女と弟子

5/6
前へ
/6ページ
次へ
魔女の寿命は長い。 身に備わった魔力が永い永い時を与えてくれるのだ。 だから自ら死を選ぶというのは、そう珍しいことでもない。私の知り合いにもそういう選択をした魔女はいる。 「好きな人が出来たんだ!」 魔女コーネリアは昔、照れくさそうに報告しに来た。桜色の髪が常に放出される魔力によって揺れる、とても力の強い魔女だった。 「この歳で笑っちゃうけど、でも、一目惚れなんだ」 「おめでとう。あなたが嬉しそうだと、私も嬉しい。どこで出会ったの?」 「それが~、人の街で、ね」 人の街。人の住む街。 「それって……」 「そう、相手人間なんだ~!この私が人間に一目惚れ!びっくりだよね~」 晴れやかに笑うコーネリア。しかし私は同じように笑うことは出来なかった。人に恋をした魔女が取る行動は、大体決まっている。 「そう……だから報告しに来たのね」 「うん。私はこの寿命を手放すよ」 人と魔女では経過する時間の流れがまったく違う。恋をした魔女は選ばなくてはならない。恋を諦めるか、生を諦めるか。寿命を縮める方法は色々とある。だから不可能ではない。簡単でもないけれど。 人生の中で、何を大切にするかの問題なのだ。一緒に過ごす人なのか、何を成したかなのか。 あれ以来、コーネリアには会っていない。 もう寿命を迎えたのかもしれない。それは、魔女である私には分からない。私の時間の中ではほんの一瞬の出来事だから。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加