第一章 闇夜の烏(カラス)は黒いのか? 

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「……仕事に行きます」  甲斐は、恋人の織田に会いたいのだろうが、死保にいても、立って歩くのが やっとの状態であった。 「甲斐さん、死保に残った方がいいのではないのですか?」  甲斐は必死に首を振っているが、その首が細くて、更にカクカクを揺れていて、 落ちそうなので支えてしまった。 「……俺は、もう時間が無いよ……だから、一秒でも長く、織田君と一緒にいたいよ……」  甲斐の現世での遺体は、家族に引き渡され、埋葬された。 これで、甲斐は現世でうっかり、自分の遺体と対面してしまう危険はなくなった。 しかし、現世での拠り所を無くしてしまうと、存在が希薄になってくるらしい。
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