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甲斐は、死保にいながらも消えそうになっていた。
「分かりました。気を付けて……行ってらっしゃい」
甲斐は、自分のしていた研究も思い出してきているので、本当に時間は残り少ないだろう。
少ない時間を、恋人と過ごしたいというのならば、俺も応援するしかない。
甲斐が、研究したいと言っても、仕事をしたいと言っても、俺は甲斐の
したい事を応援するので、それは変わりはしないのだ。
甲斐を見送っていると、後ろに時任が立っていた。
「現世での死体が埋葬されると、かなり希薄になるね……」
「そうですね……」
甲斐は、生きている時もミイラのような雰囲気で、生きているのが不思議なくらいだった。
甲斐の死体は、死後、本当にミイラというのか、はく製にされて飾られていた。
甲斐の人間離れしたどころか、生き物離れした姿は、置物にされても違和感がなかった。
ミイラでなければ、悪魔の置物で納得してしまう怖さがあった。
甲斐の姿の怖さは、死保にきても変わっていないが、俺は中身を知っている。
甲斐は、外見とは異なり、中身は優しくて可愛い。
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