第一章 闇夜の烏(カラス)は黒いのか? 

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 座席が空いたので、時任と座ると、老人が前に立っていた。 あんまり、じっと老人が見ているので、俺は立って席を譲った。 「どうぞ」  すると、時任も立ち上がって、ドアに凭れていた。 「甲斐の研究は、下手をすると、人間が滅びる。進化という名の、人間としての滅びだよね」  時任も、ざっくりと甲斐の研究を理解しているらしい。 俺は、さっぱり分からないが、進化の先に何があるのかは、やってみないと分からないと思う。 「……人という種を捨てても、いいではないですか。又、混沌からやり直せばいいだけですよ」 「……市来の、呑気なのか達観しているのか分からない顔が嫌い」  時任が俺の頬を掴んで、引っ張っていた。
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