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展望台から見えるいつもどおりの景色を前に、わたしは安心感を覚えた。
だけど、やっぱり月は見えない。
今日は雲が多いせいか、月どころか星ひとつ見えないよ。
だからわたしはただぼんやりと、その広い視界の街の夜景を眺めていた。
今日は特に何もなく、いい日だった。
明日もいい日であるといいな。
……そんなことをぼんやりと考えている。
「月、見えないな。」
ふと横から、低い男性の声が聞こえてきた。
……なんだ、今日はいたのか。
「うん、そうだね。だって今日は十五夜だよ? そんな日にお月様が見えないなんて、天気の神様ってやつはイジワルだよね。」
「そうだな。ほんと、いつもイジワルだよな。」
天気がイジワルなのか、それとも神様がイジワルなのか、わたしにはどっちかわからなかったけど、でも彼はわたしの意見に同意してくれたみたいだ。彼はいたずらっぽい顔で、くすりと笑っている。
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