月光

「月ってさ、あんなに綺麗に光って見えるけど、あれは自分で光ってるわけじゃないんだよな。」
「えっ…………？」

　今日の月は十五夜の月。だから一年で一番光って見える。
　でも、彼の言うとおりだ。
　月は光って見えるけど、光ってはいない。
　月は自ら光を発しているわけではないんだよね……。

「明日美はさ、いつもそんな風に笑ってて、その笑顔が周りを和ませてくれる。」
「そう……なのかな？」
「それで、いつもそうやってかわしながら、まるでその自覚がないんだよな。」
「……………………。」

　だって、わたしは――

「でもさ、そんな明日美でもいいんじゃないか？」
「……いい……のかな？」

　わたしは今、どんな顔をしているのかわからないけど、そんなわたしを包み込むように、彼の優しい声が響いてくる。

「だって、誰かが光を照らしてくれれば、ちゃんと明日美だって輝くんだから。その光で周りが幸せな気分になれれば、明日美の居場所はちゃんとそこにできるんじゃないかな？」
「わたしの……居場所……？」

　そんなもの、考えたことなかったけど……。
　わたしに居場所なんていらない。そんなものより、みんなが元気になれば――
　……でも、それを彼に話せば、それこそわたしは怒られる。