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すると彼は、わたしの心など全てお見通しであるかのように、くすっと笑ってみせた。
ほんとこういう彼の性格、どうにも苦手だ。
「俺にとってあいつが太陽であったように、明日美にも太陽みたいな人が現れれば、もっと輝けるんじゃないかな?」
「なにそれ…………。」
わたしは小さく、ぼそっと答えた。
わたしにそんな人、現れるわけないって。だって、わたしは――
すると彼は急に思い出したように、こんなことを言い出した。
「そうだ。この前あいつ、明日美が受験する高校と同じ高校受けるって願い事してたから、同じ高校になったらあいつのことよろしくな?」
「え。ひょっとして、ここでわたし以外の人の願い事も聞いてたりするの?」
「いやー、ここっていろんな人の秘密話がこっそり聞けるから、結構便利だぜ。」
「…………やっぱし警察に突き出してあげようか?」
彼はそう言いながら、やはり笑っている。
月の光に照らし出されたその笑顔を、わたしはしっかり自分の目に焼き付けていた。
今度、この彼といつ出逢えるかもうわからないから。
そして、もう一度わたしは、月を眺めてみた。
月はわたしの瞳を照らしてくれる。でもその月も照らし出されて光っている。
光が反射し合えば、もっと明るくなるってことかな。
わたしはそんなことを黙って考えていたら、さっきまで横にいた彼はもういなくなっていた。
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