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酒も煙草もしない。
ジルベール・グロリオーサ・マーレイは健全な少年だった。あくまで私のような大人の相手をするという点においての話だが……
少年に勧められるがままに果実酒を喉に流し込む。口の広いグラスに注がれたせいか甘みが増す。その様子をベッドにうつ伏せになって見つめられた。彼は自ら好んでそのような体勢になった。右手で頬杖をついて僅かに首を傾けている。
Tシャツの襟が伸びて、薄い胸板が覗いている。ジーンズも心做しか色褪せているようだ。美しい顔の持ち主は、恰好に気を遣わないのだろうか?
すると、ジルベールが言った。
「脱げって言わないの」
彼の唐突な一言にファニーは面食らう。「え」と口だけが動いた。しかし少年は何でもないことのように「だって、そういうことでしょう?」と問うてくる。
保身だ――。
彼と互いの時間を共有しているというのはやはり自分の保身なのだ。
「どうして、同じようなことをするの……?」
私は強がった。反論すらしなかった。だって陳腐なんだもの。
ファニーは自分の唇が形を歪めるのを感じた。言いたいことを摩り替えたことも、おそらく勘付かれていることだろう。
彼は「そう……よく聞くんだけどな」とだけ答え、顎を引いた。
ねぇ、それって元恋人からかしら?
ファニーはついそう問いかけたくなった。齢十四の少年だが、ジルベールには恋人がいた。それはほんの一年ほど前のことであり、世間の誰もがよく知っていることだった。まだ記憶に新しい。
少年が顎を引いたまま、チラッとこちらを見やる。それから「いいや。この辺りの話」と答えた。
「今日の話はつまらないね」
「そうね。やめましょうか」
どうやら自分は、この美しい少年の気を損ねてしまったらしい。大人しく彼に賛同することにした。薄い金色のまつ毛の下で伏せた目がこちらを向く。
「ねぇ、今日はどうして僕を呼んだの?」
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