Material Boy-マテリアル・ボーイ-(番外編①)

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 少年の()は熱を帯びている。 「会ってみないと……わからないよ」  ジルベールは髪を掻き上げ、頭痛がするといったように額に手を当てる。「吐き気も酷い……」と呟いた。 「水を……」 「さっき飲んだ」 「少し眠る?」 「いいや。――帰る」  私が「顔色が悪いわ……」と言うと、「色はもともと白いんだ」と返される。 「いいです。ご婦人、ありがとう」  妙に改まった様子の彼は「やっぱり……今日は金はいいや」と言った。本当に帰るつもりらしい。金も貰わず……?  目の動きで「財布は出さないで」と制されたファニーは両の手を膝の上に置いた。 「………また来てくれるかしら……」 「お酒、ぬるくなっちゃいましたね」  二人は同時に全く別の言葉を発したが、次の「そうだ」という肯定だけは重なった。 「また、何かあったら」 「待って。送るわ、ジルベール」  彼は金色の睫毛をまだ僅かに濡らしながら、よそ行きの笑みを作る。その後を弾かれるようにして追った。 「いいえ、大丈夫です。お気遣いなく……この後、またバイトがあるんです。割りのいいやつね。じゃあ」  しかし、ジルベールは我儘で、そのうえ少しばかり(かたく)なであるらしい。伸ばした指先を「気を悪くしないで?」だなんて、するりとかわされる。  迷うことなく部屋のドアを開け、さっさと出て行ってしまう。自分勝手だこと! ――ところが、彼はファニーが腹立たしく思ったことも見抜いているようで、「あぁ」と再び顔を覗かせる。 「今度は、ちゃんと埋め合わせをさせてください」  最後にそんなことを言ってきた。
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