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少し広い踊り場に侵入者の一人がいた。
しかも人質までいる。
人質はここで働いている女性スタッフさんで逃げ遅れて捕まってしまったのだろうか?
クロッカスが僕に言ったことは忘れてはいなかったけど、ここで人質になっている彼女を見捨てるなんてできない。
拳銃を撃ったことはないけど、威嚇射撃ならできるかもしれない…拳銃が本物なら…。
「か、彼女を放せ!放さないと…撃つぞ!」
とにかく助けなくちゃと思ったら、拳銃を構えて声をかけていた。
拳銃の構え方は刑事ドラマや外国の警察映画の真似だったけど、銃に無縁の僕にはそれしか構える方法がなかったんだ。
「お前が?そんな構えで撃てば、この女が死ぬだけだ。安全バーすら外していないようだぞ?」
そう言われて、拳銃に安全バーがあることを思い出す。
ただ、どこにあるのか分からない。
下手に弄って暴発すれば彼女を助けられない。
クロッカスがここにいてくれたら…と考えて、彼に頼ってばかりではいけないと思い直した。
引き金に指をかけたまま、そろそろと左手を構えから動かした時に、指が何かのスイッチに触れて、それをグッと押した。
これが安全バーの役目のスイッチじゃなかったら終わりだ。
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