真夜中の攻防戦

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耳が痛いくらいの大きな音が響いたが、相手が僅かに怯んだ隙に、彼女の手を取って引っ張るようにしてキッチンまで逃げる。 その途中でこちらに向かうクロッカスとすれ違ったが、彼と軽く頷き合ってそれぞれの目的の方へ向かう。 食料貯蔵庫は頼りないけど、多少の明るさはあるようで、奥にある地下通路の扉も難なく見つけられた。 重い鉄製の扉は観音開きで、少し大変だったが、とにかく僕も彼女も無事でいなければと思うと苦になんてならない。 扉の中は暗いけど、手探りで壁に触れれば出口に辿り着けるような雰囲気で、中に入る為の丈夫なロープが結わえ付けられていて、それにすがるようにして通路に下りる。 彼女も器用に下りてきて、二人で出口に向かう。 ここまでこられたことに安堵して、息を吐いた途端に、脇腹に硬質な物体の存在を感じた。 とっさにナイフだと悟る。 少しでも動けば怪我をすると感じた僕は、身動きが取れなくなった。 この状況でナイフを突き付けることができるのは、もちろん彼女しかいない。 ただ理由が分からない。 まだ恐怖心が拭えなくて、自衛しているのだろうか? 「あの…どうしたの…?」 「この時点で疑わないなんて、お人好しすぎないかしら?」
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