真夜中の攻防戦

12/14
前へ
/49ページ
次へ
「それって、あなたも侵入者だったってこと…?」 「そうよ。ここまで疑わない人は珍しい」 僕はスタッフさん全員の顔も名前もほとんど分からないけど、困ってると思ったから助けなくちゃと動いただけなんだ。 それっておかしいのかな? 「僕はたとえ演技で人質になっていても、必ず助けるよ。僕を騙している人は腹の中では笑っているかもしれないけど、それでも僕は手を伸ばすと思うよ。それっておかしいことかな?」 「おかしいわね。そこまでして人を信用する意味があるの?」 「人を助けるのに意味も理由も必要?敢えて理由を付けるなら、身体が勝手に動いていたから…かな」 逃げることだってできたのに、やっぱり見捨てるなんてできなかったし、僕だって誰かを守りたいって思ったんだ。 「それじゃあ、こんな状態になっても、同じことが言えるのかしら」 脇腹に付けられたナイフが向きを変えたのが分かった。 僕の脇腹を切るつもりだ…! でも、この状態で避けるなんて無理だ。 「そこまでにしてもらいましょうか。後僅かでもナイフを動かせば、あなたの命の保証できかねますが?」 よく通る低い声にホッとして、少しだけ肩の力が抜ける。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加