学園内も危険がいっぱい!?─絶体絶命の中の信頼─

5/8
前へ
/49ページ
次へ
そう、美術室に入ってきたのは、僕が頼りにしているクロッカスだった。 ホッとするやら情けないやらで、胸の中はぐちゃぐちゃで、何故か涙が溢れてしまった。 「旦那様、まずは縄を切りますので、少しじっとしていてくださいね。涙はその後に拭いますね」 「涙は自分で拭えるからね!」 僕の声に少しだけ笑って、僕を椅子ごと抱きしめるようにして、手の縄を持っていたナイフで切っていく。 何でそんなふうにして切るのか謎だったけど、僕の後ろに回ると、月明かりでクロッカスの影が僕にかかって、手元が見えないからだと気付く。 女子なら嬉しいシチュエーションかもしれないけど、僕からすれば、やっと自由に動ける喜びの方が大きい。 それでも、クロッカスがきてくれたことには感謝しているし、彼の誠実さをとても感じていて、僕が彼の専属の主人になれたらいいなと、ぼんやり考えてしまう。 僕がクロッカスにできることは、彼に相応しい主であること。 もっと危機感を持たないとダメだな。 クロッカスが縄を切ってくれたけど、同じ姿勢をずっと取っていたからか、膝を伸ばすと痛いのと、上手く歩けない。 「旦那様、手が痛いとは思いますが、しっかり掴まっていてくださいね」 「え?え?」 「失礼します」 身体がフワリと浮いたと思ったら、何とクロッカスに横抱き…お姫様抱っこされていた! 「すみません、肩を支えてゆっくり歩くような時間がありませんので、少々強引な方法を取らせていただきました」
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加