私が先輩に惚れるまで

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私が渡先輩を好きになったきっかけは、半年前、初雪が降った日のことだ。 学校が休みだったその日、私は彼氏と映画を観るため、都内のとある駅で待ち合わせをしていた。 11月にも関わらず、その日は夕方から雪が降り始め、夜にかけて大雪になった。 改札の外、屋根もないところで、凍えるような寒さに耐えながら、ひとりぽつんと彼氏がやってくるのを待っていた。 天気予報で雪だと知りながらも、どうせ降らないだろう、と甘く見ていた私は、その日、雪対策をまともにしていなかったせいで、その気温の低さに本気で凍え死ぬかと思った。 マフラーもない。手袋もない。いくら彼氏に連絡しても、返事は来ない。 レストランやカフェなど、どこか温かい場所で待機することも考えた。しかし今現在連絡のつかない彼氏がもしもここへやってきたときに、入れ違いになるのもまた面倒だと考え、寒空の下、ただひたすら地蔵のように待ち続けた。 待ちぼうけをくらって、三時間ほど経過した時、あまりの寒さに、私は意識が朦朧とし始めていた。 もうそろそろ帰ってもいいだろうか、しかし、もし彼氏が来たときに私がいなかったら―――― 三時間経った今も、脳内でそんな葛藤を繰り返しながら、お馬鹿な私はガタガタ震えながら、突っ立っていた。 その時だった。 「大丈夫ですか?」 と、彼氏ではない男の声が、頭上からかかったのだ。 (ナンパ?) 寒さのせいでうまく働かない頭の片隅でそんなことを考えながら、私はそろそろと顔を上げた。 「大丈夫ですか? 顔色、とっても悪いですけど」 その瞬間、私は目をひん剥くほどの衝撃を食らった。
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