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声をかけてきたのが、学校一のイケメンと評される、あの黄瀬渡先輩だったからだ。
「あ……あ、はい。えっと……」
あまりの驚きと、三時間も雪に晒された寒さで、うまく言葉が出てこない。
(っていうか、この人めちゃくちゃかっこいいな……)
無意識に、ぼーっと、渡先輩の顔を眺めてしまう。
それまで私は、渡先輩がイケメンで人気があるのを知っていたが、ファンではなかった。
クラスの女子がキャーキャー騒ぐのを、遠目で眺めていただけだった。
しかし、こう、間近でじっくり見ると、ファンの子達の気持ちがよく分かった。確かにかっこいいのだ。
目鼻立ちがキリッとしていて、男らしい精悍な顔立ち。まるでどこかの俳優みたいだ。
「大丈夫ですか? 意識、しっかりしてます?」
「あっ! はいッ」
心配そうな顔をする渡先輩。私は心の中で彼に向けて、ごめんなさい、と謝った。
(あなたの顔に見惚れていただけです。さっきまで意識も朦朧としていたけど、あなたの登場でそんなもんはふっとびました――)
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