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三分後
台所の片隅で見つけたカップラーメン。
書かれていたのは賞味期限らしき数字と、『三分』という待ち時間だけ。
人から貰った物なのか、シャレでたまたま買った品なのか。まったく思い出せないけれど、蓋を開けたらごく普通のカップ麺に見えたので、試しにお湯を入れてみた。
三分後、いったい何味のラーメンができるのか。
期待して、そわそわと時計を見ていたら、一分を好きだと気に何か聞こえた。
『もうじき』
確かにそんな言葉が聞こえた気がする。
だけどここは俺が一人暮らしをしているアパートで、普通ならそんな声など聞こえる筈がない。
空耳だと聞き流し、さらに一分が経過した。…その時に聞こえた声は。
『もうじき出られる』
さっきの空耳に、さらに文字を足した言葉。
部屋を見回したところで何かいる筈もない。どう考えても怪しいのは目の前のカップラーメンだけ。
もうじき出られる? どこに? 何が? …どこから?
カップラーメンの中からもうじき出られる。場所は俺の目の前。何が出るかはさすがに不明。
脳内で補完された、聞いた言葉の足らない部分。
お湯入れたら三分後に、カップラーメンの精が登場ーー! …なんてオチはないだろうから、三分という短い制限時間が過ぎる前に、今すぐ俺は目の前の物体から逃げ出そう。
三分後…完
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