つないだ手

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お店に着いたら、まだ藤中さんは来ていなかった。 「藤中さんはね、9時30分について、超高速で開店準備をするんですよ。すごいでしょ?フローリストは大抵1時間前にはついているから、彼女の仕事の速さは有名なんです。」 「じゃあ藤中さんがくるまでまだ時間がありますね。掃除はじめてます」 「まって、その前に、いろいろ教えておきたいことがあるから、事務所にいきませんか?」 黒川さんはそう言って、手をつないだまま事務所に入った。 (なんだろう?やっぱり仕事のことかな) 私は頭が仕事のことでいっぱいで、新しい何かを教えてもらえることが楽しみでワクワクしていた。 事務所に入ると、黒川さんは棚をごそごそしてアルバムを取り出し、私の前に開いて見せた。 「え・・・これって」 そこには私と太一の結婚式で握ったブーケが写っていたのだ。 「あの、これって、わたしのブーケ」 そういうと黒川さんはかすかに微笑んだ。     
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