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「覚えていてくれたんですね。嬉しいです。じつはこのブーケ、俺のフローリスト初めての大仕事だったんですよ。まだ駆け出しだった頃、花束作りの腕を見込んでもらって、結婚式のブーケを担当させてもらうことになって、あの頃はまだ俺も若くて、髪も金髪にしていたから、分からないですよね。」
思い出した。私のブーケ作りの担当者は派手な金髪の若い男性で、初めて紹介されたときは不安で、断ろうか迷ったのだ。彼の作った花束の写真をみると、どれも素敵で、その感性を見込んで依頼して出来上がった物は、理想の通りの素晴らしいブーケだったから、今でも覚えていた。
「まさか、あのときの人だったなんて、すみません。ブーケにばかり夢中で、作ってくれた人までは覚えていなくて。ウエディングハイになっていたんですね。お恥ずかしいです」
「いえ。誰でもそうなりますから。ブーケだけでも覚えていてくれてうれしい。貴方に出来上がったブーケを渡しに行ったとき、貴方は今まで出会った誰よりも大切に受け取ってくれて、綺麗な笑顔で微笑んでくれた。俺はあの時から貴方に心を奪われていたんだと思います。」
さらっととんでもないことを言う黒川さん。
私は驚きのあまり固まってしまった。
「貴方にご主人がいることはわかっています。でも、ずっと好きなんです。3年前のあの日からずっと。」
「どうして・・・そんなことを」
私は混乱した。
まさか再開してたった2日目にこんな告白をされるなんて思ってもいなかったから。
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